ddp − Linux での AppleTalk プロトコルの実装
#include <sys/socket.h>
#include <netatalk/at.h>
ddp_socket = socket(AF_APPLETALK, SOCK_DGRAM, 0);
raw_socket = socket(AF_APPLETALK, SOCK_RAW, protocol);
Linux は Inside AppleTalk に記述されている AppleTalk プロトコルを実装している。 カーネルにあるのは DDP 層と AARP だけである。これらは netatalk プロトコルライブラリを通して利用されるように設計されている。 このページは DDP 層を直接利用したいユーザーのために、 インターフェースを記述したものである。
AppleTalk とユーザープログラムとの通信には、 BSD 互換のソケットインターフェースを利用する。 ソケットに関するより詳しい情報は socket(7) を見よ。
AppleTalk ソケットは、 ソケットファミリーの引数に AF_APPLETALK を指定して socket(2) 関数を呼び出すことによって生成される。指定できるソケットタイプは、 ddp ソケットをオープンする場合には SOCK_DGRAM、 raw ソケットをオープンする場合には SOCK_RAW である。 protocol は送受信される AppleTalk プロトコルである。 ソケットタイプに SOCK_RAW を指定した場合は、プロトコルに ATPROTO_DDP を指定しなければならない。
raw ソケットは実効ユーザー ID が 0 のプロセスか、 CAT_NEW_RAW 権限を持ったプロセスでないとオープンできない。
アドレスのフォーマット
AppleTalk ソケットアドレスはネットワーク番号、 ノード番号、 ポート番号の組み合わせで定義される。
struct at_addr {
unsigned short s_net;
unsigned char s_node;
};
struct sockaddr_atalk {
sa_family_t sat_family; /* address family */
unsigned char sat_port; /* port */
struct at_addr sat_addr; /* net/node */
};
sat_family は常に AF_APPLETALK に設定する。 sat_port はポートを与える。ポート番号が 129 以下のポートは 「予約ポート (reserved port)」 と呼ばれる。実効ユーザー ID が 0 のプロセスか、 CAP_NET_BIND_SERVICE 権限を持つプロセスだけが、このようなソケットを bind(2) できる。 sat_addr はホストアドレスである。 struct at_addr のメンバー s_net にはホストのネットワークをネットワークバイトオーダーで与える。値 AT_ANYNET はワイルドカードで、「このネットワーク」も暗黙のうちに含まれる。 struct at_addr のメンバー s_node にはホストのノード番号を与える。値 AT_ANYNODE はワイルドカードで、「このノード」も暗黙のうちに含まれる。値 ATADDR_BCAST はローカルなブロードキャストアドレスである。
ソケットオプション
プロトコル固有のソケットオプションはない。
/proc インターフェース
Appletalk のグローバルパラメーターのいくつかは、 /proc インターフェースを通して設定することができる。 これらのパラメーターには、 /proc/sys/net/atalk/ ディレクトリ内のファイルの読み書きでアクセスできる。
aarp−expiry−time
AARP キャッシュエントリーを破棄するまでのタイムインターバル (秒単位)。
aarp−resolve−time
AARP キャッシュエントリーが解決されるまでのタイムインターバル (秒単位)。
aarp−retransmit−limit
AARP クエリーの最大再送信回数。この回数を越えると、 そのノードは dead であるとみなされる。
aarp−tick−time
タイマー動作する AARP のタイマーレート (秒単位)
デフォルトの値で仕様にマッチしているので、 変更する必要は全くないはずである。
ioctl
socket(7) に記述されているすべての ioctl が DDP にも適用される。
EACCES |
ユーザーが行おうとした操作に必要な権限を持っていない。 broadcast フラグをセットせずにブロードキャストアドレスへ送信を行おうとした、 実効ユーザー ID が 0 でなく、 CAP_NET_BIND_SERVICE 権限のないプロセスで特権ポートをバインドしようとした、などが考えられる。 |
EADDRINUSE
既に使用されているアドレスにバインドしようとした。
EADDRNOTAVAIL
存在しないインターフェースが要求された。または 要求されたソースアドレスがローカルでない。
EAGAIN |
非ブロッキングソケットに対してブロックする操作を行った。 |
EALREADY
非ブロッキングソケットに対する接続操作が既に実行中である。
ECONNABORTED
accept(2) の途中で接続がクローズされた。
EHOSTUNREACH
行き先アドレスにマッチするエントリーがルーティングテーブルにない。
EINVAL |
渡した引数が不正。 |
EISCONN
接続済みのソケットに対して connect(2) が呼ばれた。
EMSGSIZE
データグラムが DDP MTU より大きい。
ENODEV |
ネットワークデバイスがない。あるいは IP を送ることができない。 |
||
ENOENT |
パケットが到着していないソケットに対して SIOCGSTAMP が呼ばれた。 |
ENOMEM と ENOBUFS
メモリーが足りない。
ENOPKG |
カーネルサブシステムが設定されていない。 |
ENOPROTOOPT と EOPNOTSUPP
無効なソケットオプションが渡された。
ENOTCONN
接続されていないソケットに対して、 接続状態でしか定義されていない操作を行おうとした。
EPERM |
高い優先度に設定したり、設定を変更したり、 指定したプロセスやグループにシグナルを送るのに必要な権限を ユーザーが持っていない。 |
||
EPIPE |
接続が接続相手によって、予期しないやり方でクローズまたはシャットダウンされた。 |
ESOCKTNOSUPPORT
ソケットが設定されていない。または未知のソケットタイプが要求された。
AppleTalk は Linux 2.0 以降でサポートされている。 /proc インターフェースは Linux 2.2 以降に存在する。
SO_BROADCAST オプションを用いる時には慎重の上にも慎重になってほしい。 Linux ではこれに特権を必要としない。 不注意にブロードキャストアドレスに送信を行うと、 ネットワークの状態が簡単に変更されてしまう。
移植性
基本的な Appletalk ソケットインターフェースは BSD 由来のシステムにおける netatalk と互換性がある。多くの BSD システムでは、 ブロードキャストフレームを送信しようとしたときの SO_BROADCAST のチェックに失敗する。これは互換性の問題となるかもしれない。
raw ソケットモードは Linux 独特のもので、もう一方の実装である CAP パッケージや、 Appletalk モニタツールをより簡単に実装できるようになる。
エラーの値がまったく首尾一貫していない。
ルーティングテーブル、 デバイス、 AARP テーブル、 その他のデバイスを設定するために用いられる ioctl がまだ記述されていない。
recvmsg(2), sendmsg(2), capabilities(7), socket(7)
この man ページは Linux man−pages プロジェクトのリリース 3.79 の一部 である。プロジェクトの説明とバグ報告に関する情報は http://www.kernel.org/doc/man−pages/ に書かれている。